バズ・ライトイヤーのアストロブラスター

 バズ・ライトイヤーのアストロブラスターは単なるシューティングゲームではないか

東京ディズニーランドに新しいアトラクションが2004年4月15日でオープンする。前にビジョナリアムがあったところだ。ここはマジックジャーニー、アメリカンジャーニー、ビジョナリアムと360度の大画面を使ったシアタータイプのアトラクションで、楽しむというよりも、ためになる、という感じのところであった。未来の国というコンセプトであるトゥモローランドにふさわしいといえるだろう(あれ、でもアメリカンジャーニーはアメリカの国の紹介みたいなものだったから、ちょっと違うな)

それはともかく、バズ・ライトイヤーのアストロブラスターがとうとうオープンすることになる。そろそろ関係者向けの試乗会なども始まる頃だ。本当はもっと早く書きたかったのだが、仕方ない。
本当なら正式にオープンしてから書くような話なのだが、私はアメリカで同じ名前のアトラクションを体験しているので、その経験からこのアトラクションについて批評してみたい。
日本のものはまだ乗っていないということで、「前編」という形にしたい。

このアトラクションを体験した率直な感想は、「ナンジャタウンにあるアトラクションと同じやないか」というものだった。知らない人のために解説すると「蚊取り大作戦」というもので、ゲストは「ニュー豚平&豚子号」という乗り物に乗り、殺虫スプレー型光線銃「ジェットスプレーガン55」を使って、あちこちにいる化け物蚊を撃ち落すというものである。撃墜率が高ければ、新聞に顔写真が載ったものをもらえるのだ。
……ここまで書けば、バズ・ライトイヤーのアストロブラスターことを知っている人は「同じっぽい」と思うだろう。どちらが先かは知らないが……たぶんナンジャタウンの方が先だったような気がするが、そう同じようなものなのだ。もちろんディズニーだから、立派な装置だし、造りも立派だ。でもね……。

前置きは長くなったが、昨年夏、日本でもできるということで、かなり期待をしてわざわざファストパスをとり、乗ってみたのだ。
……結果は、単なるシューティングゲームだった。
実は、私はトイストーリーを見たことがなく、ストーリーやキャラクターをまったく理解していない。でも、そんなことを知らなくても楽しめるのが、ディズニーのアトラクションなのだ。ということは知らないのは関係ない。
ライドに乗って、次々に現れる敵……といっても、的のようなものだが、それをライド備え付けの銃で撃っていく。当たると得点が入るようになっていて、ライドのディスプレイに得点が表示される。敵によっても得点が違うので、ゲーム感覚で楽しめるものになっている。

……ちょっと待ってくれ。ディズニーのアトラクションはいつから、そんな陳腐なものになったのだ。もっと高尚だったり、誰もが楽しめたり、ストーリーを体験したり……そういうものではなかったのか。いつから、ゲームセンターとなってしまったのだ。シューティングゲームが得意な人ならともかく、苦手な人はおもしろくない。自分の不得意さを数字で見せ付けられるわけだ。
「ああ自分はこんなに低い点数だった」
中には次こそは、と思う人もいるかもしれないが、シューティングゲームの嫌いな人間は「何がおもしろいんだ。二度と乗らん」と思うのではないか。
このアトラクションは「トイストーリー」の世界を充分に味わうことができるものなのか?
話の中身をよく知らない私にはなんともいえないが、これがトイストーリーの世界そのものなら、なんてつまらない作品なのだろう。

シューティングゲームとしては、たしかに難しい。シューティングギャラリーよりも難しいだろうし、「蚊取り大作戦」よりもずっと長い時間乗って撃ち続けることができる。でもそれは、単なるゲームの楽しさであって、アトラクションの楽しさではない。もう一回乗りたいと思う人のほとんどは「次はもっと高得点を狙うぞ」という意気込みであって、「もう一度体験したいね」というものではないはずだ。

ビジョナリアムに代わり、そんなアトラクションを選んだ運営会社の考えが理解できない。社長は「エイリアン・エンカウンター」を考えていたようだが、あれこそ一瞬だけの子供だましのものである。

そのへんから見えるのは、長期的な視野ではなく、当面よければ、それでいいという考え方ではないだろうか。
それは20周年のイベントを細かく期間をきざんで、さまざまに実施し、多くのリピーターを確保しようとする小手先な戦略の現れでもある。

話は難しくなってしまったが、私はバズ・ライトイヤーのアストロブラスターよりも、ナンジャタウンの「蚊取り大作戦」の方がおもしろいと思う。
なぜならば、少なくとも、「蚊取り大作戦」の方がナンジャタウンというテーマパークに見事にマッチしているからてである。
(いや、本当に、アメリカで初めてバズ・ライトイヤーのアストロブラスターに乗ったとき、「蚊取り大作戦」じゃん、と思ったくらいだし)