PUSHくん ●今はもういない、トゥモローランドのアイドル「プッシュくん」　　　 「プッシュくん」をご存知だろうか。 まだ21世紀になる前、トゥモローランドに突然現れ、そして消えてしまった自走型トラッシュカンのことである。カストーディアル、とはいえないが、今回は彼の話をしよう。 トゥモローランドを漂うに進んでいたのが、プッシュくんである。彼は自走するだけではなく、会話をすることもできた。もちろんトラッシュカンなので、ごみを捨てることもできた。ある程度たまれば、カストーディアルが回収していた。 彼はさみしがりやで、ゲストがかまってくれないときは、道行くゲストやキャストにいろいろと話しかけたりもした。彼は会話上手で、とくに子供たちから好かれていた。ミッキーマウスなどのキャラクターたちはあんまりしゃべってくれないが、プッシュくんはやさしく、ときにはちょっと毒を吐いたりしながら、話し相手になってくれるのだ。 都合が悪くなると、突然動き出したり、と、ちょっと気ままなところもあった。 私もはじめて見たときは、本当に不思議に思ったものだ。どうやって動いているんだろうかと。 少なくとも人が入っているわけではない。 ちょっと離れてみていたら、突然あることに気づいて、思わずしゃがみこんでしまった。 でも、だからといって、失望したわけではない。 いまだかつて、対話型の「キャスト」がパークの中にいただろうか。 たしかにキャストに話しかければ相手をしてくれるが、みんなが会話上手ということではない。第一、キャストはいろいろと仕事をもっている。キャラクターは話しかけてもにこにこするだけだ。 それなのに、プッシュくんは、ちゃんと話し相手になってくれるのである。彼はパークにとって新しい存在だったのだ。 しかし、彼はある日突然、パークから消えてしまった。一説にはアメリカへ帰ってしまったという話もあるが、果たしてどうなのだろう。 双方向型キャラクターとして、初めての存在だったプッシュくんは、パークにとって、どんな意義があり、続いて何につながっていくのだろうか。プッシュくんにパークの新たな方向性が見えたような気がしたのは、私だけだろうか。